pilocytic astrocytoma 毛様細胞性星細胞腫

pilocytic astrocytoma 毛様細胞性星細胞腫
定義
主として若年者、特に幼児に発生する比較的境界明瞭な良性腫瘍。
Rosenthal fiberを持つ双極性細胞が充実する部分と、細胞間隙が開き、浮腫や好酸性顆粒小体eosinophilic granular bodyを有する多極性細胞の部分(二相性パターンbiphasic pattern)。
Low grade diffusely infiltrating astrocytomaとは区別すべき
WHO分類ではastrocytoma grade I
発生頻度・部位
すべてのgliomaの約5-6%で、年間発生率は10万人あたり0.37人といわれている。
67%が小脳に発生する。
主として若年者、特に幼児の小脳虫部、視神経、視交叉と脳幹部に発生し、稀に大脳半球にも認められる。
臨床症状
一般に腫瘍は極めて緩徐に発育し、時に増殖が止まったり、縮小したりする場合がある。
画像所見
一般に境界が鮮明で造影剤に強く造影される。cystを伴うことも多い。
肉眼所見
小脳に発生する場合は、比較的境界が明瞭であり、弾性硬の灰赤色の腫瘍で。
通常、cystが存在し、小脳虫部から半球内進展し、しばしばくも膜下腔にも伸展する。
それに対し、視神経に発生する場合には一般的に、①infraorbital,②infracanalicular,③intracranical,④diffuse typeに区別され、後者でしばしばexophytic typeをとり、時にcysticである。
光顕所見・免疫組織化学的所見
腫瘍細胞は比較的均一であり、unipolarあるいはbipolarな紡錘形を示しており、pilocytic, piloid, hair-like, spogioblast-likeなどと表現されている。その突起はPTAHあるいはGFAPによって染色される。核は卵円形あるいは棒状であり、分裂像はほとんど認められない。細胞の配列は、しばしば束や渦巻きのような流れを織りなしているが、細胞密度の高い部分と、細胞がまばらでmicrocystを形成する部分がある。その中に特徴的なソーセージ状あるいは棍棒状で、エオジンによく染まるRosenthal fiber(glial fiberの退行変性像)や、顆粒状の内部構造を示す円形のgranular bodyが観察される。
Rosenthal fiber : 細長い突起を持つ細胞の間に、エオジン好性均質なソーセージ状の構造物が多数形成されている。
Pilomyxoid astrocytoma : 毛様突起を持つ小型細胞が、血管周囲に偽ロゼット状に配列している。間質には粘液様基質がよく発達している。
分子生物学的知見
comparative genomic hybridizationマイクロアレイを用いたゲノム研究では、32%に何らかのchromosomal gainを認めるという報告がある。第5,第7染色体のgainの頻度が比較的多く見られ、発症年齢とともに異常のある染色体も多くなる。Diffuse astrocytomaのようにp53遺伝子の変異やPDGFシグナルの異常は殆ど報告されていないが、apolipoproteinD(apoD)の発現増加が報告されている。
治療・経過・予後
小脳、視神経に発生するpilocytic astrocytomaの予後は、すべてのgliomaのうち最も良好であり、全摘により完治が可能である。亜全摘でも、再発までに長い時間の寛解期間が得られる。NF1に合併した視神経部の腫瘍では、しばしば自然退縮がある。
亜型
・Pilomyxoid astrocytoma
毛様粘液性星細胞腫
毛様星細胞から成る腫瘍であり、豊富な粘液性基質と血管中心性の細胞配列が特徴的であり、Rosenthal fiberや好酸性顆粒小体などは乏しい。この腫瘍には主に4歳以下の乳幼児に好発し(平均10ヶ月)、視交叉部、視床下部が好発部位である。pilocytic astrocytomaの特徴である二相性パターンは見られず、腫瘍細胞の核はクロマチンに富むが多形性は乏しく、核分裂像は少ない。MIB-1 LIは2-20%と幅があるが、5%前後の値を示すことが多い。本亜型はpilocytic astrocytomaよりも侵襲性があり、局所再発や脳脊髄播種の頻度が高く、予後不良である。WHO GradeII

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