「雨の前の頭痛」は耳のせい?ついに判明した内耳の「気圧センサー」の正体
参考文献:Sato, J., et al. (2025). The inner ear is a barometric pressure sensor—change in barometric pressure induces vestibular ganglion cell activation in mice. Scientific Reports.
論文リンク:PMID 41444276
スライド資料:内耳は気圧センサーである_天気痛のメカニズム解明
天気が崩れる前に頭痛がしたり、古傷が痛んだりする**「天気痛(気象病)」。これまで経験的に知られていたこの現象ですが、最新の研究によって、私たちの耳の奥にある「内耳」が気圧センサーとして機能している**実態が明らかになってきました。
今回は、マウスを用いた実験で判明した「気圧を感じる神経の仕組み」について、わかりやすく解説します。
気圧の変化にだけ反応する「特別な神経」を発見
最新の研究では、自然な天候の変化に近い「20hPaの気圧低下」をマウスに与え、脳や神経の反応を調査しました,。
その結果、内耳にある**「下前庭神経節(IVG)」**という部位の神経細胞が、気圧が下がったときだけ有意に活性化することが確認されました,。
興味深いのは、メリーゴーランドのような「回転刺激」を与えたときには別の部位(上前庭神経節:SVG)が反応しており、気圧の変化を察知するための専用ルートが存在していることが示唆された点です,,。
センサーは内耳のどこにある?
この研究データから、気圧センサーは内耳の中でも特に**「球形嚢(きゅうけいのう)」や「後半規管」**に存在する可能性が高いと考えられています,,。
特に球形嚢は、外部の気圧変化が伝わりやすい「卵円窓」のすぐ後ろに位置しています。そのため、天気が変わる前のわずかな気圧の揺らぎに対しても、敏感に反応できるのではないかと推測されています。
なぜ気圧が変わると「痛み」が出るのか?
内耳が気圧の変化をキャッチした後、どのようにして体調不良や痛みが引き起こされるのでしょうか?研究では、以下の3つのルートが仮説として挙げられています。
- 自律神経の乱れ: 気圧の変化が内耳を介して交感神経を興奮させ、血圧や心拍数を上昇させる。
- ストレスホルモンの放出: 脳の視床下部を刺激し、**ストレスホルモン(コルチコステロンなど)**を放出させることで、痛みに敏感な状態を作る。
- 三叉神経の興奮: 内耳の神経(前庭神経)と、顔の感覚を司る三叉神経が相互に繋がっているため、気圧変化が片頭痛を誘発する。
まとめ:天気痛の治療に新たな光
これまで、鳥類には気圧を感じる特殊な器官があることが知られていましたが、哺乳類であるマウスでも同様の仕組みが確認されたことは大きな発見です。
この研究が進むことで、将来的に**「天気痛を根本から防ぐ薬や治療法」**が開発されることが期待されます。
💡 理解を深めるための比喩 内耳の気圧センサーは、いわば**「体内に備わった高性能な気圧計」**のようなものです。この気圧計が敏感に反応しすぎると、脳が「嵐が来るぞ!」と過剰な警報(痛みや自律神経の乱れ)を出してしまうのが、天気痛の正体なのかもしれません。


