二刀流の片頭痛薬:治療も予防も、ナルティーク

頭痛外来

新薬「ナルティーク」 片頭痛の「治療」と「予防」がこれ1つで。

2025年12月16日、新しい片頭痛治療薬「ナルティークOD錠75mg(一般名:リメゲパント)」が発売されます。

このお薬は、日本で初めて「片頭痛が起きたときの治療(急性期治療)」「片頭痛を起こりにくくする予防(発症抑制)」両方に使える飲み薬として承認されました。

これまで片頭痛治療薬(トリプタン製剤など)や予防薬(注射薬など)を使い分けていた患者さんにとって、新しい選択肢となるお薬です。今回は、ナルティークの特徴や飲み方、費用について解説します。


ナルティークのはたらき

片頭痛は、三叉神経という神経からCGRPという物質がたくさん出て、CGRP受容体に結合し、脳に痛みが伝わると考えられています。

ナルティークはCGRP受容体に結合することで、CGRPの作用を阻害します。

これにより、片頭痛発作の治療(急性期治療)および片頭痛の発症抑制(予防療法)の効果が期待されます。

ナルティークの3つの特徴

「発作時の治療」と「予防」の2つの効果

ナルティーク最大の特徴は、飲み方を変えることで2つの目的で使用できる点です。

  • 急性期治療: 頭痛が起きた時に服用し、痛みを鎮める。
  • 発症抑制(予防): 定期的に服用し、頭痛の回数を減らす。

水なしで飲めるOD錠

口の中に入れると唾液で速やかに溶ける「口腔内崩壊錠(OD錠)」です。水なしで服用できるため、外出先や仕事中など、急な頭痛発作が起きたときでもすぐに飲むことができます。

血管を収縮させない新しい仕組み

ナルティークは「CGRP受容体拮抗薬」と呼ばれるタイプのお薬です。片頭痛の原因物質とされるCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)の働きをブロックすることで痛みを抑えます。 従来の特効薬(トリプタン製剤)は血管を収縮させる作用がありましたが、ナルティークには血管収縮作用がありません。そのため、これまで血管系の持病などでトリプタンが使えなかった方でも使用できる可能性があります。


飲み方(用法・用量)

目的によって飲み方が異なりますので、必ず医師の指示に従ってください。

目的 飲み方
片頭痛発作の治療
(今ある痛みを止めたい)
頭痛発作が起きた時に、1回1錠(75mg)を服用します。
※1日の合計は1錠までです。
発症抑制
(予防したい)
2日に1回(隔日)、1回1錠(75mg)を
決まったリズムで服用します。

【服用のコツと注意点】

  • 出し方: 錠剤が割れやすいため、シートから押し出さず、裏面のシートを剥がしてから取り出してください。
  • 飲み方: 水なしで、舌の上または舌の下に乗せて、唾液で溶かして飲み込んでください。
  • タイミング: 発作時は、痛みが強くなる前の早めのタイミングでの服用が目安です。

発症抑制(予防療法)のための服用予定日に、片頭痛発作がおきたとき


費用について(薬価の目安)

ナルティークの薬価は1錠あたり2,923.2円です。
保険適用(3割負担)の場合の自己負担額の目安は以下の通りです。

  • 1回分(1錠): 約880円
  • 予防で1ヶ月使う場合(隔日投与):
    • 1ヶ月(約14~15錠)で約12,000円~13,000円程度。
    • ※新薬のため、発売から1年間は「1回14日分(7錠)」までの処方制限があります。その場合、2週間分(7錠)で約6,140円となります。

※上記は薬剤費のみの概算です。別途、診察料や調剤料などがかかります。


副作用と注意点

  • 主な副作用: 悪心(吐き気)、便秘、眠気などが報告されていますが、多くは軽度です。
  • 重大な副作用: まれに発疹や呼吸困難などの過敏症(アレルギー反応)が出ることがあります。異常を感じたら直ちに服用を中止し、医師に連絡してください。
  • 飲み合わせ: 一部の抗生物質や抗真菌薬(イトラコナゾール等)など、併用できない・注意が必要なお薬があります。現在服用中のお薬がある方は必ずお薬手帳を持参してください。
  • 妊娠中の方: 服用には慎重な判断が必要です。必ず医師にご相談ください。

医師からのメッセージ

ナルティークは、従来の「トリプタン製剤」が合わなかった方や、注射薬での予防治療にハードルを感じていた方にとって、手軽に始められる新しい経口薬です。

例えるなら、ナルティークは「痛みの配達人(CGRP)が、家のポスト(受容体)に手紙を入れるのを防ぐブロック役」のようなものです。 従来の薬のように道路(血管)を無理やり狭めることなく、痛みのメッセージだけを届かないようにするため、お体への負担が少ないと考えられています。

「最近頭痛の回数が増えた」「今の薬があまり効かない」とお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。


※本記事は2025年12月時点の情報に基づいています。実際の処方は医師の診察により決定されます。

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